岐阜新聞朝刊のコラム「素描」第4回 2021年3月27日『手書き誤字脱字チラシ』

私が店を継いで間もない頃、お客様の姿がない店を心配した近所の商店主さんが「チラシを出してみたら」と教えてくれました。ただ、人気の商品をチラシに載せようにも私にはその商品を仕入れる経費がありませんでした。苦肉の策として商品ではなく私自身を紹介することにしました。
チラシの内容は最近読んだ本の感想、出張先での出来事、子供の頃の思い出、冷蔵庫の中身紹介などで、商品のPRとは関係ない内容で紙面が埋まりました。出来上がったのは手書きの素朴なチラシでした。
こんなチラシが、果たして許されるものかと心配しましたが、新聞折り込みをするたびに電話やはがきでチラシの感想が届きました。誤字脱字を教えてくれる人もいました。チラシを保存してくれる人まで現れ、年末には「楽しいチラシをいつもありがとう」と菓子折りが届きました。ただの店のチラシでしたが、お客様に私の思いは届いていたようです。
ただ、うれしいと同時に悔しくて仕方がありませんでした。商品購入にはなかなかつながらず、商人としては失格だと感じていました。
そこで一つだけ仕入れたサンプル商品をチラシに掲載し、予約時に代金の先払いをお願いしてみました。すると「あなたが薦めるなら」と、多くの注文とともに私への応援の言葉をいただきました。買い物行動は、お客様の応援行動だと知りました。売れないのは商品のせいではなく、私の商売に対する姿勢に問題があったのです。
応援してくれる人を裏切ることは出来ないと感じ、専門分野の勉強をやり直し始めました。
この記事は
株式会社ごえん 代表取締役社長
地域商店コンサルタント
山田文美(やまだあやみ)
が書きました。
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