商圏人口の少ない地方中小店のための「顧客名簿」ノウハウ

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「名簿獲得4ステップ」の順番を間違えず、1日、3日、1週間、1カ月で予定を立てる“人間のクセ”を利用せよ
商売は魚釣りに似ています。大海原でやみくもに釣り針を投げ入れても魚は釣れません。釣りたい魚の好きな餌を、泳いでそうな所に垂らすことでやっと釣ることができます。
そして、せっかく釣った魚を何の印も付けず再び海に放してしまっては、二度と同じ魚に出合うことはできません。
では、放すときに印を付けて居場所が分かるようにして、もう一度釣りたいときに合図すれば集まってくるようにしたらどうでしょうか。
魚をお客、印を顧客名簿、合図をDMやメールと置き換えてみましょう。
「お客に来店してほしいときに顧客名簿のお客にDMやメールで合図すると集客できる」となります。顧客名簿が収益源と言われる理由です。
特に、商圏人口の少ない地方中小店の顧客名簿の作り方と使い方にはコツが要ります。
接触回数×質=人間関係のある売上げ
お客と店舗の間には「人間関係」が存在します。
例えば、レジを通るときに、特に何といった会話をするわけでもないのに、従業員を選んで列に並ぶことがあります。
どこで買っても同じ商品なのに、わざわざ遠くの店の従業員から買いたくて遠出することもあります。
従業員と話がしたくて、買物を言い訳に来店することもあります。
「物を買う」のではなく、「〇〇さんから買う」が購買理由になるこうした現象は、お客との「接触回数×質」でつくり出されています。
地方の中小店は、人口減で店の前を歩く人が少なくなり、地域面積に対して店舗が減っているため偶然に店を発見してもらえる確率も低く、新規客と出会える可能性は減少し続けています。
まさしく、大海原での釣り状態です。だから一度出会ったお客と一生つながれる縁づくりが大切になります。
新規客との出会いの率が低い地方中小店ですから、お客を名簿化して何度も接触するチャンスをつくり出さなくてはいけません。
一般に商売では、新規客は宣伝広告や店舗設営といった経費を使って集めます。
つまり、新規集客のために使った経費で、お客を買っているのです。新規客の名簿を取らないのは、買物してきた商品を家に帰るなりごみ箱に捨てるのと同じです。
お客を名簿化できたら、何度も接触できるようになり売上げへと変えることができるのですから。
「コノ場所のアノ魚」と狙いを定め一本釣り
これまで、「顧客名簿」という言葉は、お客の囲い込みといった言葉とセットで使われてきました。ですが、お客は日々情報をアップデートし、無垢な子羊ではなくなり、柵の中に囲い込まれることはなくなりました。
お金を使う場面では、自らが選んで決定する「自己重要観」を行動基準とする変化が起きており、店舗側の押し付けや、ネットでの過度な誘導を嫌う性質が強くなっています。
そして、物が充足した状態では、焦って買物をすることはなくなりました。
買おうかどうしようか、買うなら何にしようかという検討時間が長くなり、この時間まで楽しませてくれる店舗と付き合いたいと思っています。
「接触回数×質」の質を求めるお客が増えたのです。お客は、知らない物事を教えてもらって学び、買物しないときでも情報をもらって店舗から大切に扱われていると感じたいのです。
大手電器店などで見掛ける、「上顧客のあなたさまだけへ」と印刷されたDMを顧客名簿全員に送り、無料プレゼントをばらまく手法は、中小店には向きません。
より多くの人に同じものを送る方法は、ますます経費がかかるようになり小さな資本力では不可能になりました。
それよりも、より少ない人に個別のものを送る手法を目指すべきです。無駄な経費が省かれ、反応率が上がり、購入率も上がっていくからです。
網を投げて魚を一網打尽にするには人口が少な過ぎる地方では、「コノ場所のアノ魚」と具体的な一匹に狙いを定めて一本釣りする方が確実です。
不特定多数にばらまくためではなく、特定少数の人を名簿化するところから始め、徐々に何度も購入していただける「特定多数」に育てることができる顧客名簿を作っていきましょう。
ストレスなく成功する名簿獲得の4ステップ
「お客を囲い込め」と言われていた時代には、とにかく名簿を集めるために過剰なサービスが行われていました。
現在もその名残で、LINE@などで会員登録をしてもらうとプレゼントや割引をしますとうたっている店舗がありますが、その多くはすぐに解除やブロックされてしまいます。
魚が針に付いた餌だけ上手に食べて逃げるようなものです。お客はだまされたくないのです。
では、用心深くなったお客からどうしたら名簿を頂けるのでしょうか。
名簿は以下の準備物と4ステップで取るようにします。
■事前準備物
◎名簿登録後に送る実物DMや実際のメール画面
◎名簿登録の際に記入してもらう登録用紙や登録画面
■名簿獲得の4ステップ
1 100%のお客に名簿登録の説明をする
2 名簿登録後に起こることをDMやメール画面の実物を見せながら、お客の得になるように説明する
3 名簿登録を解除する方法を教える
4 登録用紙や登録画面を見せて登録をお願いする
お客心理の思考順序に合わせてありますから、この順番どおりにすると名簿獲得の確立が上がります(図表①)。

従業員が「この人は名簿登録してくれそう」とか「してくれなさそう」などと、勝手にお客を判断してしまうのは、ステップ1に反するので名簿獲得の確率が下がってしまいます。
名簿登録するかどうかはお客が決めることですから、目の前の人に100%声掛けしましょう。
ステップ2で、名簿登録後の煩わしさを嫌がるお客心理に対応します。
登録後に何が起こるのかを最初にお教えするのがコツです。メールが届くなら実際のメール画面を見せ、DMが届くなら実物のDMを見せて、「ご登録いただいた方には、チラシには掲載されないこうした少数入荷の特別提供品や、会員限定イベントへの優先的参加のお知らせなど、お得な情報をお届けしています」などと、登録後に起こるお客の得になることをお教えします。
そしてステップ3です。ステップ2の後に、「必要なくなったらお電話などでご連絡ください。すぐに止めさせていただきます」と、やめ方をお教えしましょう。
お客は「断る」という行為を心理的負担に感じる生き物ですから、申し込みより先に断り方を知ると安心して名簿登録する確率が上がります。
最後にステップ4ですが、事前に準備しておいた登録用紙や登録画面をお見せして「こちらにご記入をお願いします」とさらっとお願いしましょう。
記入するかどうかを決めるのはお客であり、従業員ではありませんから、さらっとお願いするだけで事足ります。
断られたら「承知しました」と、あっさり笑顔で引き下がることです。ここでがっかりした態度や表情にならないことで、お客が店舗に好印象を持ち次回来店につながるケースがあります。
実は、失敗率が高い名簿獲得方法は、いきなりステップ4から始めてしまうパターンです。お客は、一つだけを強要される「追い込まれ感」が嫌いですから、条件反射のように断られてしまいます。
ステップ4を行う前に、1~3と順を追うことで、名簿登録への不安や恐れが減ります。
また、名簿記入用紙や画面のタイトルにも気を付けましょう。「顧客名簿」と書かれたものに記入するのは躊躇してしまうのがお客心理だからです。
お客は名簿に載りたいわけではなく、「この店は私の役に立ってくれそうだ」と思うから名簿登録をしてくれるのです。
だからタイトルは「お得情報優先的お届け名簿」などとして、記入したらどんな得になるのか分かりやすくなる工夫をしましょう(図表②)。

このス4テップを暗記していきなりお客対応するのは難しいので、レジ横などに手順を明記しておくか、名簿獲得専用のクリップボードに貼って、それらを見ながら進めると無理なく名簿獲得ができるようになります。
顧客名簿はデジタル管理とアナログ管理を併用する
せっかく獲得した名簿を、年賀状の名簿のようにしか活用できていない店舗を多く見掛けますが、それでは、名簿を売上げに変えることは至難の業でしょう。
名簿は、購入履歴などの過去の出来事を検索するならPCソフトを使うデジタル管理が便利で、デジタル名簿には過去の売上げ記録があり、アフターフォローに役立ちます。
名簿から未来の売上げをつくり出したいのなら、紙ベースの顧客名簿にお客との会話を記録しておきます。
例えば、家族情報や趣味、仕事の悩みや旅行の報告などです。
忘れてならないのは、質問されたことや在庫になかったけれど希望された商品情報などです。
暇があるとき、事あるごとに紙ベースの顧客名簿を開きます。お客との会話を読み返すと、お客に提案できる商品在庫が入荷したことを思い出せるので、個別に商品紹介できるDMを送ることができます。
お客が何を喜ぶか想像できるので新しいイベントを思い付くこともあります。やみくもにイベント計画や仕入れをするよりも、実際のお客の顔と声を思い出しながら企画と仕入れをした方が成功確率はぐっと上がります。
想像の産物ではなく、誰を喜ばせるのか、誰の役に立つのかが明確になればなるほど売上げにつながっていきます。アナログ名簿には未来の売上げ記録があるようなものです。
また、個別の会話記録は、そのお客だけに向けた個別はがきや手紙を書くときの材料になり、内容に悩まなくなります。多くの人に一斉に同じ内容のDMを送るのではなく、一人の人に個別のDMを送ることができるようになるので、成約率が格段に跳ね上がります(図表③)。

名簿のお客に定期的に接触していくときに気を付けたいことは、まずは接触頻度です。
名簿獲得から3日以内に来店や購入のお礼状を送付します。同時に、店舗側からの自己紹介DMを送ると、一生お付き合いしていただけるようになります(下の写真は一例)。
お客を詳しく知ることができれば具体的な商品提案につながりますが、お客は自分のことを店舗にできるだけ知られたくないものです。
それは、欲しくもないものを売り込まれるのが嫌だからです。でも同時に、自分に必要なことなら教えてほしとも思っています。
こうしたお客心理には、店舗側から先に自己紹介してしまうのが有効です。相手の名前が知りたければ、自分が先に名乗ってから、あなたのお名前を教えてくださいと聞けば自然と教えてもらえるのと同じです。
だから、自己紹介シートには、お客について知りたいことを自分も書いておくと、お客側から教えてもらえることがあるのです。
生まれ年の干支や、家族情報、趣味、仕事内容に仕事を続けていく熱意などを書いて送ると、従業員の人物像に共感してファン客になってもらえます。

お客の好みの接触方法で再接触と教育をしていこう
ある自動車販売店では、お客の次回購入予定とタイミングを知りたいが教えてもらえないとの悩みがありました。
ところが自己紹介DMを送付するようになったら、今年の9月ごろに娘の車を買い替える予定だなどと、聞かなくても自発的に教えてもらえるようになり、提案タイミングと内容の精度が上がり成約率が約2倍になりました。
物が充足している現状では、何を買うかよりも誰から買うかが購入決定の理由になりやすいので自己紹介が大切になります。
3日以内に送れなくても1週間のうちには送りましょう。そして1カ月後には、自店商材紹介と少しだけ専門的なことを伝えます。
なぜなら、人は1日、3日、1週間、1カ月で予定を立てるクセがあるからです。
お客の生活リズムに自店を入れ込んでもらえれば再来店率が上がり一生客になりますから、このリズムを意識してみてください。
伝えるべきは自店の専門性です。お客は購入するかどうか検討する時間に学びたいのです。定期的に接触できたら、自店に有利な教育ができるのです。顧客をリピートさせるための接触日数にもルールがあるのです(図表④)。
名簿数を上げていくために、紙ベースのDMだけではなく、お客とLINE交換をしましょう。
LINEが登場する前は、紙ベースやメルマガ登録で名簿獲得をしていましたが、これは氏名住所をいきなり尋ねるので成功率が低い。
LINEでつながれば、住所氏名を聞くことなく個別の連絡手段が手に入ります。お客も、住所を教える必要がないので心理的ハードルが低くなります。
LINEで送れる情報量は少ないですが、まずはLINEでつながり、次回来店時に詳しい名簿内容をお聞きする2段階方式で名簿獲得を目指してもいいですね。
地方の人口減少のスピードは年々速くなっていきます。今日から一人でも多くのお客とつながる名簿獲得に動きましょう。

この記事は
株式会社ごえん 代表取締役社長
地域商店コンサルタント
山田文美(やまだあやみ)
が書きました。
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