【実例】商品と催事 低迷期でも売れる商品に注目 布石となる“売らないイベント”

数は出ませんが、売上げ・客数減のときでも売れる商品が必ずあるはず。そこに注力しましょう。売らないイベントで、お客に商品やサービスを知ってもらい、次の来店を期待します。
GWは「お出掛け消費」が活発になります。日常と比べて非日常である「お出掛け消費」は予算をしっかり使います。その反動でGW後の日常消費が節約され、この時期の店舗売上げが落ち込みやすくなります。ここを月末に回復させるために何をしたらいいのか?にお答えします。
Contents
1月より難しいGW明けの商い
GW後は、年末年始後の1月に売上げが一時ダウンしやすい状況と似ています。1月は続く2月、3月に年度末・年度初めが控えています。必要品の買いそろえや新生活への期待感、冬から春への大きな季節変化に対応した新商品発表が後押しするので、消費の動機付けが比較的簡単です。
これに対してGW後は、季節変化は穏やかですし、新商品販売数も少なく、節約ムードを打ち壊すことが難しいといわれます。
それでも、売上げはゼロではありませんね。こうしたときは「客数・売上げダウンしている最中でも売れているものは何だろう?」と、視点を変え売上げ分析をしてみることです(図表①)。
売上げが少ない中でも売れているものを探し、今売れている商品を宣伝していきましょう。売れていないものを売るには時間が必要です。ですが、今売れている物をさらに売るには、GW明けに準備を始めて、月末までに仕掛けても間に合います。

季節商品と定番物こそ商機あり
筆者の経験ですが、売上げ減でも売れるのは、⑴特に宣伝しなくても売れている季節商品、⑵定番(ベーシック)物だと思います。自店での探し方を具体的に教えましょう(図表②)。
今年をはじめ、去年、一昨年と3年間の資料から、この時期に売れている商品を探します。突出した売上げ数値でなくても構いません。
店側が特に宣伝しなくても売れている商品は、お客さまに知ってもらうだけでも、売れやすくなります。
定期的にチラシを打っている店の例を挙げます。「毎年5月に当店販売数1位」として紹介します。通常の棚位置と店頭のレジ横位置の2カ所でコーナー展開しながら、POPもチラシと同じキャッチコピーを使ってお客さまに知らせましょう。
新潟にある洋品店では、毎年GW明けに一定数の定番パンツが売れていました。「伸びる素材」「腰回りのゴムが幅広でもたつかない」「脚長に見える」の三拍子で、一人のお客さまが色違いを2枚、3枚と購入されていくのです。そこで、お客さまにはがきを出しました。
「毎年5~6月の売上数No.1の“3つの秘密”1ノビノビ素材で気持ちいい 2腰回りゴムはずれない&ゴムに見えないスッキリデザイン 3ヒップアップするから脚長に見えるカッティング」と大きく書き、商品写真を掲載。
そして、「一人で色違いを購入される方が多いです。定番の黒・ベージュ・ジーンズカラーの他に明るい新色も入りました。ぜひ店頭ではき心地と色の違いを比べてください。ご来店お待ちしています」と書きました。
割引もポイントサービスもなく、普通に定価でのご案内です。新商品が少ない、客数も少ないという時期に、定番品で一人数点の購入を勧めることができる商品は、5月の月末売上げにつながりました。

店を思い出してもらう「思い出しはがき」
飲食店や理美容など、「来店=売上げ」の業種は、思い出してもらうだけで来店につながります。
長崎の化粧品店では、エステの案内をはがきで送りました。売上げにつながったコツは、はがきの文面に工夫をしたことです。「ふと〇〇様を思い出しました。またお顔のお手入れをさせていただきながら、旅行のお話を聞かせてくださいね」と手書きしました。文章が少なくて済むように季節の花の写真を使った絵はがきを用い、その他の売り込みは一切していません。一人ずつお客さまの顔を思い浮かべながら、お客さまとの会話を思い出しながら書きました。
久しぶりのエステ来店につながり、店内でゆったり過ごしていただいたために、お客さまはディスプレーしていた化粧品に目を留められお買い上げにもつながりました。商品を売り込む前に、お客さま自らが商品に気が付く機会を増やしつつ、「来店=売上げ」もつくれる「思い出しはがき」です。
“意味のないつながり”は商品に気付かせる機会
お客さまは日々さまざまなマーケティングにさらされて鍛えられていますから、売り込み気配を敏感に察知します。売りたいための割引が効かないのは、売りたい思いが透けて見えてしまうからです。
客足がなく売上も減少すると、つい「商品の宣伝をしなくては!」と肩に力が入ってしまいます。店は、当然ですが商品・サービスを伝えたい。ところがお客さまは、そんな店の都合は聞きたくありません。でも、商品サービスを伝えないと、売上げにはなりません。そこで、この“温度差”を埋める必要があります。そのためにお勧めする手法の一つが、「売らない店頭イベント」です。
この店頭イベントの目的は、売ることではありません。「店内の商品を見てもらう機会をつくる」ことにあります。店にとって商品を勧めないことは“意味のない”こと。ですが、お客さまにとっては“店との人間関係の強化”になり、「この店は安心だ」と無意識に認識され、自ら商品探しを始める場になります。
“意味のないつながり”は人間関係を強化する
お客さまは店の都合で商品を知らされる前に、まずは「この店では私をどう扱うのか」を知りたがります。人類には昔々の草原で暮らしていた時の記憶が残っています。ですから、お客さまも、“敵に襲われないよう”に、その店が自分にとって安全かを無意識に探ります。
「この店に入り、何も買わないで出てくることができるか?」とお客さまは気にしているのです。「放っておいてほしいけど、相手もしてほしい」という矛盾した気持ちが「お客さま」です。この矛盾を詳しく言い換えると「私が聞きたくないことは言わないでほしいけど、私が聞きたいことは教えて欲しい」となります。
売らない店頭イベントは、お客さまに「この店は安全だ」と納得してもらうことにつながります。それは、人間関係が強化されるためです。お客さまにとっては店都合に感じられる商品という部分を省いて、付き合う機会をつくる。そこでお客さまの側から自然に商品に興味を持ってもらう仕掛けとして、売らない店頭イベントがお勧めです。
売らないイベント 目的は店を見てもらう
奈良の宝石店では、売らない店頭イベントとして小さな音楽会を開催しています。宝石店などの高額でリピート率が低い商材を扱う専門店は、入店してもらうこと自体が難しいのです。でも商品を見たいとお客さまは思っています。ならば、売り込まれる危険性を排除して、勝手に商品を見る機会を増やせばいいわけです。
開催した小さな音楽会は、まず店内の商品が見える配置で音楽鑑賞をしてから、その後のお茶会は店内の別の場所に移動して行います。お茶会のときには、店の商品サービスで定番となる“電池交換・修理”や“真珠・宝石リフォーム”などのPOP説明を目に入るように設置しました。お客さま自らが読む仕掛けです。
売るイベントでは売り込まれる危険性が高いため参加数は少ないのです。でも、この売らないイベントはあっという間に参加数に達します。参加者は、その後の定番商品の問い合わせや購入へとつながります。
今日すぐの売上げにはつながらないかもしれませんが、必ず未来のそれにつながります。今日の売上げは過去の行動がもたらします。未来の売上げのために種まきをするには、来客数が少ない時期がチャンスです。
そのため、①例年の売れ行き商材を洗い出し季節性商材として知らせる、②ベーシック商材の価値洗い出しをする、③思い出しはがきで人間関係を強化をする、④売らない店頭イベントで店内になれてもらう、など今できる種まきをしましょう。



この記事は
株式会社ごえん 代表取締役社長
地域商店コンサルタント
山田文美(やまだあやみ)
が書きました。
関連記事はこちら