2000人に調査 小売りの6割が迷惑行為を経験 やってはいけない対応

クレームには2種類あります。商品やサービスの不備を知らせてくださるクレームと、お客の期待にそぐわなかったという感情クレームです。特に接客業では従業員にクレームが直接届き、事前に対処方法を知らないと、事態がこじれ解決までに長引くことがあります。また、従業員がショックを受けて、離職につながるケースもあります。
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要望=クレームをお客が言いやすい環境に
クレームについての同じ質問を、一般消費者(以下、一般客)と接客業務従事者にした結果から、両者の間にある違いが分かります。後者は、読者に近い人たちかもしれません。数字を見ながら、正しいクレームの対処方法と、従業員にも配慮したクレーム対応を考えてみましょう。


一般客、接客業務従事者共、40歳以上でクレーム経験者が格段に増えます(図表①②)。これには世代の特徴が明確に表れています。
人は年齢とともに人生経験が豊富になり、40代以上になると、商品やサービスにどういったことが起こると不具合が生じるかの判断ができるようになります。また、起こったことを店舗側に正しく伝えるための言葉が豊富になり、苦情を伝える表現方法も数多くなるので、クレームが多くなります。
逆に、10代、20代と年齢層が低くなるほどクレームが少なくなります(図表①)。学校教育を受けている間は、決まった小さな集団の中でのマナーに強く影響されます。周りの多くの人と同じ行動を取ることで、集団の和を乱さないマナーを優先するのでしょう。若年層のお客は、「言葉にはしないけれど、苦情があるかもしれない」と思ってお客に気を配るようにしましょう。
店側が工夫したいのは、クレームを言いやすい環境をつくり出すことです。「何か気になる、確認したいことがあるなどの場合、○○の方法でお知らせください」など、口頭や店頭案内を徹底しておきましょう。クレームが言い出せない環境は、お客を店から遠ざけます。逆に、すんなりクレームが言えれば、解決時間が早くなります(ただし悪質は除きます)。
接客業務従事者は共感性が高い
接客業務従事者は、自分がお客のときでも、常に自分の仕事に置き換えてみるため、クレームが多くなります。つまり、お客の視点での意見があって、これに、「店のことを考えたら、苦情の内容を知り、改めた方がいい」という従業員としての意見が加わります。両者が合わさり、クレーム数が多くなるのです。
一般に接客業の人には、共感性が高いという共通点があります。そのため、観察眼が鋭くなりクレーム部分を見つけやすいのです。特に50代が高い(図表②、68.5%)のは、自分が責任のある立場で仕事に取り組む割合が高いからでしょう。
読者の皆さんも、同業の他店を実際のお客として利用し、商品やサービスで感じたことをリポートにまとめてみましょう。自店を改めることができるはずです。
飲食店は物販よりクレームを受けやすい
次にクレームの内容です(図表③)。

「従業員のマナー、態度」「サービス内容」へのクレームなども含まれることから、お客は商品だけを買っているのではなく、買物時のシチュエーションも買っていることが分かります。「異物混入」「料理提供時間」「注文料理の間違い」「食器の破損」などが指摘されていることから、「物販より飲食店の方が苦情を受けやすい」と分かります。
忙しいのは分かりますが、お客はただ待つのみ。待ち時間の少ない状態と比べて、期待が大きいとクレームの割合が高くなります。飲食店に限らず、お客をお待たせするときは「お待たせして申し訳ありません。あと5分ほどかかると思います。出来上がりましたらすぐお持ちします」など、現状報告をすることでクレーム数は減らせます。
クレームが複製されるやってはいけない対応
次いで、クレームへの対応を見ます。

ほとんどの項目で一般客より接客業務従事者の割合が多くなっていますね(図表④)。この人たちは、おそらくクレームと同時に、「どんな対応をしてほしいか」も伝えているのでしょう。
ちなみに、クレームが起こったときの対処方法は、図表④の項目が全てです。丁寧な謝罪と、それ以外の項目のどれを組み合わせて対応するかを決めるのが、素早い解決につながります。

一方、「許せない対応」は、ほとんどの項目で、一般客と接客業務従事者が同じ割合です(図表⑤)。唯一、「警察に通報する」の割合が極端に少ないことから、接客業務従事者は無理難題を要求しないと推察できます。
この「許せない」と感じる項目は、クレーム解決を遅らせるものばかり。なぜならば、対応の仕方によっては、新たなクレームが発生するからです。逆に言えば、図表⑤の項目は「やってはいけない対応」として利用できます。
許認可業種にクレームが多い理由

次に、迷惑行為を受けた人を業種別にみると、公務員、情報通信、運輸・郵便など、規則や法律で融通が利かない業種が多くなっています。(図表⑥)。規則や法律が適用される業種は、説明に時間をかけ、理解を助ける資料が必要です。
教育・学習支援のクレーム数が比較的少ないのは、分かりやすく教えるという本業の特徴が事前説明にも影響しているためでしょう。このことからも、事前説明に時間をかけて、理解度を上げてもらう取り組みの必要性が、読み取れます。
常識を超えた悪質クレームは、相手の弱点を見つけたら執拗に攻撃し続ける行為に似ています。クレームと関係のないことや日々の鬱憤までも、怒りとして吐き出しているようです。迷惑行為には従業員一人で対処させず、責任者も関わり、警察や弁護士など外部専門家にも介入してもらいましょう。
丁寧な謝罪 無理難題には毅然と

どんなクレームでも対応パターンは同じです(図表⑦)。ひどいクレームを言う人でも、お客はお客。丁寧に謝罪し、その上で無理な要求には毅然と対応し、応じられない要求は断るのが、現場で取れる最善策でしょう。
お客も従業員も同じ人間。なのに、「お客さまは神様」というフレーズが独り歩きして、「ひどいクレーム、要求も通る」と勘違いしているケースもあります。できないことを毅然と断らず、あいまいな態度を取っていると、火に油をそそぐ結果になります。注意しましょう。
機械の正確さと心の対応は両立するか

最後に、各社はクレーム対応のマニュアルや教育をどの程度準備しているのでしょうか(図表⑧)。現場で優先されるのは売上で、クレーム対策は後回しにされがちです。マニュアルや教育を準備することによって実際の現場の状態を把握すれば、これがクレームの予防につながります。まずは、過去のクレーム一覧を作るだけでも、予防策は浮かびます。やってみましょう。

対策に関連して、相談できる人がいない人の割合が約30%という数字が気掛かりです(図表⑨)。起きてしまったことは消えませんが、自分の思いを言葉にして誰かに聞いてもらう。それだけで前に進めます。職場に相談する相手がいなくても、友人に聞いてもらうなど相談先をつくっておきましょう。
相談される立場になったら、事務的な解決策とともに、相談者の心に寄り添うよう「大変だったね」などの言葉掛けも必要です。叱責ではなく寄り添いと解決、最後に今後繰り返さないための工夫へと話を進めていきましょう。


昨今、迷惑行為が増えた背景には、消費者の”大き過ぎる期待”があります(図表⑩⑪)。「機械のように早く正確に」を求めながら、同時に人としての心の対応も期待しています。「何でもできる」というと、簡単に集客できる気がしますが、これは一番言ってはいけないこと。できることだけ前面に打ち出した集客に努めましょう。
この記事は
株式会社ごえん 代表取締役社長
地域商店コンサルタント
山田文美(やまだあやみ)
が書きました。
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